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Sunday, September 26, 2004

Warren Buffett 

今週の木曜日に50名のTUCK在校生とともにオマハに飛ぶ。バークシャー・ハサウェイ本社でウォーレン・バフェットと会ってディスカッションを行うためである。先着50名というアナウンスのメールがあってから即サインアップし、この生涯でも貴重な機会を得ることになった。

ウォーレン・バフェットは年初に発表されたフォーブス長者番付で、マイクロソフトのビル・ゲイツに次いで二位(4年連続)にランクされたスーパーお金持ちである。その資産総額430億ドル。110円換算で4兆7千億円。ここまでくるともはや金持ちという表現さえ相応しくない。

バフェットはネブラスカ州オマハという片田舎の町でバークシャー・ハサウェーという持株会社(投資会社の変形バージョン)を経営している。子会社は保険会社から出版社、家具・宝石・アイスクリーム販売まで多岐に及んでいる。今回のOmaha Tripでは、株主総会で株主がバスツアーで回ると言われるネブラスカ・ファニチャー・マートやボーシャイム宝石店も訪問することになっている。

バフェットはその独特なユーモアセンスで数々の名言を残している。

「私はお金が欲しいのではありません。お金が増えていく様子を見ることが楽しいのです」

などはその真骨頂である。実際、無駄なものには全くお金は使わないそうで、純粋に投資という事業が大好きな人柄が伝わってくる。

バフェットは1930年生まれの74歳(ちなみに彼の長年のビジネスパートナーであるチャールズ・マンガーに至っては1924年生まれの80歳)。その歳にしてまだ第一線で活躍しているのは、彼の並外れた知的好奇心の賜物であろう。8歳にして株式に関する本を読み始めたという筋金入りの投資家バフェットの投資哲学は以下のようなものである。

・長期で株式を保有し、限られた銘柄に集中投資する
・徹底的な企業分析(経営者を含む)を基に持続可能な成長力のある企業に投資する
・分からないものには投資しない(従ってハイテク企業は対象外)

僕にとって興味深いのは、バフェットがいわゆるMBA的な理論を全く信用していないばかりか、「難解かつ抽象的」な理論を学んだ学生たちが毎年大量に投資の世界に輩出されているという事実こそが、バフェットが利益をあげられる要因になっていると考えていることだ。過去数十年間で過半数の投資信託がS&P500インデックスのパフォーマンスを下回っているという事実はバフェットの言葉を部分的に裏付けている。

実際2年目の授業をとっている身としては、ビジネススクールもそれほど捨てたものではなく、世の中の動きに対してそれなりに健全に対応していると思う。例えば1年次のコア科目ではCAPM、効率的市場仮説、DCFといったお決まりの理論を学ばせる一方、選択科目ではそれらを否定的にとらえる教授もいる。実態として使われている基本理論は網羅しつつ、自分の頭で考えることを課している訳で、それをどう解釈し、どう使うかは自分次第ということになるのだろう。

昨年選択科目でとったFSIAという授業のハウエル教授が正にそういう人だったのだが、彼は熱烈なバフェット信奉者で(バークシャーのケースも授業で扱った)、このOmaha Tripにもちゃっかりサインアップしている。事前にバフェットに送られるエクセルシートの一言自己紹介欄に「35年間教授をしています」と書いてあったのには笑ってしまった。

それにしても会合や講演をあまり好まないというバフェットだけに、これは本当に貴重な機会である。

Wednesday, September 22, 2004

Corporate Restructuring 

新学期が始まるとさすがに忙しい毎日だが、以前に比べるとかなり自分のペースで学ぶことができている。一つにはこれまでにも何度か触れているが、毎日のスタディグループがないので一日に3~4時間は節約できていること、もう一つは自分が選択した科目を取ることで高いモチベーションを保てると同時に、ワークロードのバランスもうまく図ることができることである。

僕の中で今学期一番の目玉はCorporate Restructuringである。これは企業の競争力を高めるための企業再生方法、具体的にはDivestiture, Spin-off, Split-off, Equity Carveout, Tracking Stock, LBO等のコンセプトを、ケースを織り交ぜながら定量、定性の両面から学ぶ授業である。ゲストスピーカーも何人かやって来るようだ。

昨年は「どうしてここまで複雑にする必要があるの?」と思うような入り組んだケースのモデリングに苦労させられたが、この授業は過度に数字に偏っていないだけに自分の頭で考える時間を与えてくれる。例えば、ひと通りリーディングアサインメントをこなし、関連書籍を再読する中で、はたと立ち止まり、アメリカ経済のダイナミズムがいくつかの重要な要素に支えられているということに頭を巡らす。抽象的に言えばより高い株主価値を生み出せる組織、よりリソースを有効に活用できる組織に絶えず変化させられるメカニズムである。これは事業の売却やスピンオフ、M&A、ベンチャーの育成環境等にブレイクダウンできる。

企業は永遠に成長し続けることはできない。HBSのクリステンセン教授は、市場が飽和し、成長が失速した企業がGNP成長率を1%でも上回れるケースは4%に過ぎないと分析している。そうであるならば、必然的にやってくる成長の鈍化に的確に対応し、国家レベル、企業レベル、ひいては個人レベルで競争力を維持するために、組織構造を絶えず変化させるメカニズムが不可欠ということになる。

恥ずかしいことに日本での実態にあまり明るくないので推測になってしまうが、親会社の支配力やシナジー効果を重視する傾向が強い日本企業は、売却やスピンオフよりも、影響力を行使し続ける前提でのトラッキングストックやカーブアウトが現実的な選択肢になっているのではないだろうか。いやそれ以前の段階か。しかしそれでは異なるビジネスプロセス、価値観が必要とされる新規事業を的確にマネージできない可能性がある。これはもう耳にタコができるくらいあちこちで聞く話だが、企業再生と絡めて考えることで自分の中で新たな意味を持つようになっている。

なぜ日本企業は株主にネガティブな影響を及ぼす可能性のあるConglomerate, Diversificationを望むのか。今日のリーディングによると、その理由は企業のトップやマネージャーに権力と権威をもたらすからであり、事業構造を意図的に複雑化、不透明化することで、株主に対する相対的パワーを強めることができるからということになる。そういう自己保身が経営者のマインドであるならば、投資家からの適切な圧力、議決権の行使なども促進されてしかるべきだろう。

成長が鈍化した企業は売却やスピンオフを使って組織を細分化し、それぞれの市場に合ったビジネスプロセス、価値観を基に利益の最大化を追求する。その過程ではM&Aも有効に活用されるべきだろうし、勢いのあるベンチャー企業との競争、協調にも直面しなければならない。成長事業はその成長性をより加速させることにフォーカスし、衰退事業も運営の効率化によってキャッシュカーウとしての地位をできる限り長続きさせる。そして総体としてConglomerateを上回る価値を生み出せればいいのである。何とも理に叶っている。

当面はこの価値観をベースに、今学期の授業にアプローチしていきたいと思う。ちなみに今学期選択した授業は、Corporate Restructuringの他、Managerial Accounting, Managing Corporate Entrepreneurship, Implementing Strategy, Marketing New Productsである。個々の授業についてはまた折を見て触れてみたい。

ところで。まだ9月も半ばだと言うのに、ハノーバーでは早くも秋から冬の気配が感じられるようになってきた。朝晩の冷え込みは結構厳しく、最低気温が既に一桁を記録する日も増えている。ニューイングランド名物の紅葉もおそらく2~3週間くらいで見頃になるのではないだろうか。木々が色づき始めたと思っていると、今度はあっと言う間に一面雪景色の世界に変わるはずである。

Monday, September 13, 2004

Back to School 

ここのところキャンパス周辺ではアングラの新入生と両親と思われる人たちを多数みかける。アイビーリーグの名門校に入ったという両親の喜びとともに、この僻地ハノーバーでいよいよ自分の息子、娘たちが一人立ちするという感慨もあるのだろう。両親は頻繁に足を止めて、キャンパスや建物の美しさに感嘆している。キャンパスを案内する新入生たちもどこか誇らしげだ。銀行でも口座開設のために両親と一緒にブースに座って熱心に説明を受けている学生を見かける。米国の親たちは結構親ばかなのである。

一方TUCKにも一斉に学生たちが戻って来た。コースパケットを取りに行くとサッカー部のエースJoeに出くわす。彼はマッキンゼーでインターンをし、最後にはオファーをもらったらしい。文武両道で性格も良く、自信に満ちた彼であれば、きっとマッキンゼーでも成功できるに違いない。Stell Hallで立ち話をしていたDesi, Tom, Melanieの輪に加わる。Desiに「USA Today見たよ。写真も記事もすごく良かったね。ところであの刺青ほんとに入れてるの?」と聞くと「もちろん。見るか?」と袖をまくりあげる。TUCKの緑のロゴが、マッチョなDesiの二の腕に確かに彫られている。そんなDesiもゴールドマンサックスからオファーをもらったようだ。僕は社費派遣という立場上、夏休みに他社で働くことは許されなかったのだが、彼らの武勇伝と前途洋々たる未来は正直ちょっと羨ましくもある。

図書館で予習をしていると、今度はお母さんとおばあさんを連れて校内を案内しているMikeに声をかけられた。ビジネススクールの学生はみないい大人ではあるのだが、やはりアングラの学生と同じように両親は子供の生活環境に興味津々であり、そんな両親の気持ちに学生たちも応えている。そういう僕の両親も来月ついに遠路遥々ハノーバーにやって来る。ちなみに試験期間中です。


Sunday, September 12, 2004

Network Revolution 

最近我が家のネットワーク環境が一変した。まずケーブルテレビ会社の高速インターネットが漸く利用可能になったという通知をもらったので早速電話で申し込みをする。例によってまたかなり紛糾するだろうと覚悟していたのだが、意外にスムーズに事が運び、テクニシャン(ベテランと若手の二人組)が何と指定した時間通りにやって来る。

これまで「靴を脱いでくれ」というと「いやそれは安全規約上できない。ここから俺が指示するからお前がやれ」と言われるのがオチだったのだが、今回は「じゃあこのビニールを靴の上から履けばいいな」とシャワーキャップのような水色の袋をおもむろに取り出す。「なんか医者がオペでもするみたいだな」と笑いながら入ってきた二人は、ケーブルの接続、ネットワークの設定をあっと言う間に終えて「これでオペは終了です」と爽やかに帰って行った。期待値が低かっただけに異常に感動してしまい、思わず「滅茶苦茶早い!君たちは偉い!」と肩をたたく。アメリカも捨てたものではない。

まだ近所で加入者が少ないのか、Tuckのイーサネット環境を上回るほどスループットが高い。こうなると今度は涙ぐましく毎日ダイヤルアップで日本のニュースサイトやメールを見続けてきた妻にもこの環境を分かち合わなければいけない。ということで近所のコンピューターストアでNETGEARのルータ(802.11g)と無線LANカードを購入、設定作業に取り掛かる。これまでヤフーのニュースを表示するのにひと苦労だった妻のノートPCで映像のストリーミングが再生できるようになった。画期的すぎる。

こうなると渡米以来ずっと使いたかったVonageのIP電話が現実味を帯びてくる。Vonageとはブロードバンド回線さえあれば、既存の電話機で格安のIP電話が使えるサービスを提供しているベンチャー企業で、数年前から通信業界では注目を集めていた。また4月にTuckで開かれたGreener Ventures 2004というイベントでCEOと直接話をする機会に恵まれ、彼のオープンな人柄、ビジョンにも好感をもっていた。

オンラインで申し込みをすると数日で専用モデムとマニュアルが到着。これで月額14.99ドルで米国内は500分かけ放題となる。日本への国際電話も1分4セント。これでボストンの怪しい出店でコーリングカードを買う必要もなくなった。通話履歴も料金明細もウェブでほぼリアルタイムに確認できるので利便性もなかなか良い。というかすごく良い。通話品質も全く問題ない。また僕には必要ないのだが、Virtual Phone Numberというサービスも面白い。これは例えばニューハンプシャーに住んでいながらカリフォルニアの電話番号が取得できるサービスで、頻繁に電話をかける実家や友人が他州にいる場合はかなり重宝するだろう。

そんな訳で今、僕の部屋の机は通信機器とコードが山積みで大変なことになっている。ケーブルテレビ用のアウトレットからケーブルモデム、IP電話モデム、ルーターと三つの機器を介してノートPCにつながっている。またIP電話モデムからは電話機とFAXにケーブルが伸びている。見た目はあまりよろしくないが仕方がない。

こうなると必然的に問題となるのが電話会社Verizonの契約をどうするかという点だ。Verizonからはほぼ使わない電話サービスの対価として毎月50ドルの請求書が届いている。1年で600ドルとなるとバカにならない。現状ではVerizonの回線に全く依存しない環境が出来上がった訳だが、機器のどれかに不具合がおきたり、停電になった場合はアウトだ。ただ携帯電話は持っているので一応ライフラインは確保されている。つまり最も被害を受ける可能性があるのは「妻のインターネット」である。そのことをひと通り丁寧に説明した後、妻が一言。「いいんじゃん。切っちゃえば」

ということで我が家は電話会社と縁のない家庭となる。日本では事業者間の競争も激しく、都市部の若者や独身世帯を中心にこのような事例が増えており、電話会社は強い危機感を抱いている。米国の電話会社はどれだけ深刻にとらえているのだろうか。僕の居住エリアで未だにADSLを提供できず、顧客対応もすこぶる悪いと評判のVerizonに未来はあるのだろうか。テクノロジーの進歩は着実に業界地図を塗り替えようとしている。

Saturday, September 11, 2004

The Innovator’s Solution 

これまで読もうと思いつつ長らく本棚に収まっていたものを夏休みにいくつか取り出して読んでみた。その中で、「イノベーションへの解(The Innovator’s Solution)」は僕の期待を大きく上回り、今後何度も読み返すべき快作であった。著者のクレイトン・クリステンセンはハーバード・ビジネススクールの教授でもあり、前作「イノベーションのジレンマ(The Innovator’s Dilemma)」で一躍脚光を浴びたイノベーション研究の大家である。前作がやや難解かつ冗長であったのに対し、続編となる本作では前作の上澄みを経営学全般と関連付けて、更にマネージャーに処方箋を提供する完成度の高い教材に仕上がっている。

曲がりなりにも経営というものに関心を持ち、シンクタンクという研究職で様々な企業(特に情報通信産業)の栄枯盛衰を目の当たりにする過程で、僕の中で素朴な疑問が湧き上がってくるようになった。「どうして企業は成長し続けることができないのか」「どうすれば株主の期待に応えることができるのか」「そもそもなぜ企業は成長し続けなければいけないのか」本書は様々な角度からその問いに対するヒントを僕に与えてくれた。過去に成功を収めた企業が失敗を犯すメカニズムもずばり本質をついており、僕の経験に照らしても思い当たるふしがありすぎる。

痛快!超勉強学(和田秀樹著)の次のような行が頭をよぎる。

私がまだ高校生だった頃、既に記憶術の極意を極めていたと思しき友人がいました。彼は地方の出身で、親元を離れて下宿生活をしていました。両親の監督がないのをいいことに、夜8時過ぎまでゲームセンターで遊んでいるというように気ままな毎日を送っていましたが、それでいて成績は常に5番以内という強者でした。その彼の下宿生活の部屋に遊びに行って驚いたのは、本棚には全科目合わせて10冊程度の参考書しか並んでいなかったことです。受験戦争が激しかった時代で、問題集や参考書やらを何十冊も買うのが常識だったので、これにはびっくりしました。彼がやっていた勉強法は、これと思える参考書を1科目につき1冊だけ選び、繰り返し何度も読むことだったのです。

ビジネス書、経営書にもある程度、同じことが当てはまるような気がする。僕はともすれば流行りの、または売れ筋の経営書をとりあえず買って本棚に並べておくことに満足してしまう傾向がある。しかし「読んだ」という事実は実践レベルではほとんど役に立たないばかりか、脳(大脳皮質)に長期記憶として定着しない。これと思えるテキストを折に触れて読み返し、様々な文脈に応用できるまで理解を深めること、情報量を減らすことで思考回路の精度を高めること。これに優る勉強法はないのかもしれない。

とは言え、秋学期のコースパケット(教材)と教科書を受け取り、相変わらずの分厚さにややうんざりしている。また毎日怒涛のリーディングと宿題に忙殺される毎日がやって来る。でも考えてみれば今の僕が置かれた状況は、情報を取捨選択する前の段階であり、ある程度強弱はつけつつも、何にでもかぶりつく必要がある。その中で将来自分の糧となる知識、思考能力が形成されるように、情報を処理するフィルターの精度を意識してやっていこうと思う。


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