<$BlogRSDUrl$>

Thursday, December 30, 2004

Fall Term Grade 

2年目最初の秋学期の成績がオンラインで発表されていたので、特にドキドキ感もなく何となく確認してみる。ところが予想に反して成績が良かったのでちょっとびっくり。2年目にして初めてのH (Honors)が二つ、また苦手だと思っていた科目も含めてS+ (Satisfactory Plus)が二つ。1年時は「平均的、またはそれ以下」を意味するS (Satisfactory)が普通で、たまにS+がある程度だったことを考えれば格段の進歩である。特にHは上位10%程度と言われており(実態は不明)、自分には縁がないと思っていただけに嬉しかった。

Hがついたのは、

・Implementing Strategy: Management Control System
・Marketing New Products

の二つである。両者ともCase Discussion形式で授業が進められる点は共通で、ExamだけでなくClass Participationもそれなりの比重を占めている。ということはその点も評価されたということで素直に嬉しい。今にして思えば秋学期は「とにかく何か発言しなきゃ」という必死さからでなく、自然体でクラスに参加できていたように思う。要因を自己分析してみると、

・ビジネススクールの授業に慣れてきた
・時間的に少し余裕ができ、それなりの準備ができるようになった
・選択科目になって「自分が選んだ」という意識をもつようになった
・「がちがち数字のみ」というクラスが減った

などがあげられる。

前者はProf. Vijay Govindarajan(通称VG)による人気コースで、教室一杯の60名が二クラス。管理会計の要素も用いつつ、バランスドスコアカードなどの概念的なフレームワークも取り扱う、総合的な「戦略実践論」の授業である。秋学期は扱う題材が重なるManagerial Accountingを同時に取っていたので、数字の部分で苦手意識を払拭できたことも大きかった。

VGはインド出身だが、もう十何年もTUCKで教えている名物教授。Harvard Business Reviewにも写真が載ったりするくらいその道では結構有名な人で、僕が入学前に知っていた数少ない教授の一人でもある。ものすごいインド訛りなのだが、話す内容は明快、いつも笑顔を絶やさず、良いポイントをついた学生の発言には胸の前で両腕をぐるぐる回しながら"Interesting"を連発する愛嬌のあるキャラクターで学生からも非常に人気が高い(欲していた答えからずれた発言は何事もなかったように流されるのでたまにずっこける)。最後のFeedbackでも「この授業は選択科目ではなくコアでじっくり教えるべきだ」という声が多かった。

後者はVisiting ProfessorのErwin Danneelsによるほのぼの系少人数クラス(14名)。時間帯が夜ということもあり、犬を連れてくる学生も複数いて、かなりリラックスムードの漂う授業であった。僕は中間試験の点数が異常に高かったのだが、成績という意味ではExam, Class Participationに加えてGroup Projectが考慮される。僕は親友でもあるKuと二人でチームを組んだ。内容そのものよりも、初めて彼と同じチームで働くということの方が僕にとっては重要だった。

テーマはKuがサマーで働いた教育産業の某大手企業に決めたので、中身は専らKu頼みだったが、僕は「授業で学んだ内容をしっかり盛り込めているか」という視点から貢献するように作業分担を行い、限られた時間の中で効率的に良いものが出せた感じはあった。プレゼン直前になってKuが完璧主義ぶりを発揮、その結果かなりKu色の強いアウトプットとなったので、これが高い評価を受けていたとすれば、本当にKuのお陰である。

最後の授業の後にDanneels教授から、「Rio、俺はお前が将来どんな人間になるか (how you're gonna end up with) とても楽しみだ」と言われ、「どういう意味?もしかして嫌味?」と思っていたのだが、どうやら前向きな意味で捉えていいらしいということが分かって少し安心した。


とは言え。成績の良し悪しははっきり言ってあまり意味がない。就職面接でもまず成績を聞かれることはないようだが、僕のように転職活動をしていない学生にとっては尚更である。「悪いよりは良い方が気持ちがいい」「前向きな気持ちでまた頑張ろうと思える」ことくらいである(ただそれを成績の悪い人が言っても説得力がないので、そういう意味では精神衛生上良かったかも)。成績そのものよりも何を学んだかの方が遥かに重要なので、秋学期はこれで良しとして、残る冬学期、春学期はその点を意識してやっていきたい。

Friday, December 17, 2004

FSIB DAY 15: Blue Sky 

長かった3週間が漸く終わりを告げた。一日一日がこれほど長く感じたことは今までなかったのではないだろうか。厳密に言うと新年からの冬学期に引き続きプロジェクトのアップデートをすることになっているのでまだ完全には終わっていない。

午前中は慌しく打合せ。まだLに対する感情のしこりはなくなっていない。5分寝たら忘れるのが常の僕にとっては極めて稀なことである。一晩だけルームシェアしたRに事の次第を話すと「それはひどいな。今まで俺が聞いた中でも最悪だ」と同情してくれた。そんな訳で引き続きLとは目も合わさない。その後、Nと二人で会議室にこもって作業をしていると、たまりかねたLが「話がしたい」と部屋に入ってきた。「一体何が起きているのか知りたい。何がどうなってるの?」と聞いてくるL。僕は「話す価値もない。無意味。きっと君には一生理解できない」と突き放す。

すると雰囲気に耐えかねたのかNが「俺は誰も嫌っていない。チームにどうやって貢献するか一生懸命考えてやってきただけなんだ」と妥協の姿勢を見せる。「何を言ってるの。あなたはずっと素晴らしかったじゃない。そこに疑問の余地はないわ」と真顔で言うLの言葉に僕は思わず腹を抱えて笑ってしまう。僕はこれまで何度もこういう言葉を聞いてきて、悉く裏切られてきたからだ。Lは「何が可笑しい」とご立腹の様子。「いや君が言ってることとやってることがあまりにも違うから可笑しくて。僕はこれまで君と良い関係を築こうとずっとベストを尽くしてきた。でもそれは無駄だった」

「分かった。Nはとてもオープンに話してくれた。ありがとう。Rioはとても失礼ね。もういい」と去って行くL。あれれ?僕だけ悪者?後でFからも「何だかRioだけ悪者ってことになってるよ」と教えてもらう。僕がこれまでに会った中で最も失礼な部類に入る人に失礼と言われるのはあまり心地良い気分ではないが、まあ彼女にも彼女なりの言い分があるのだろう。

アムステルダム組のRとMは昨日現地でプレゼンテーションを済ませてきたので午前中だけ顔を出して教授に結果報告を行った後、一足先にチームを後にする。この二人とは仕事で直接関わることはできなかったのだが、本当にいろいろな面で支えられた。がっちり握手を交わし、「新年にまたハノーバーで」という言葉でひとまずお別れ。彼らにとっても大変な3週間だったので、暫しの休暇をゆっくり満喫してほしいと心から思う。

正午からのプレゼンテーションはKとLが担当した。学校のクラスではないので、5人が入れ替わり立ち替わり発表するのはプロフェッショナルではないだろうというのがメンバーの合意となった。質疑応答を含めて約1時間半。時折厳しい質問が飛んできたり、予想通りいろいろと課題は残ったものの、最終的には「とても印象的だった」という言葉をSVPからかけてもらい、発表も無事終了。VPが「これはまだ中間発表であり、このメンバーには米国に戻ってから引き続き仕事をしてもらいます」と全員に宣言したのにはちょっとがっくりきたが、ともかく英国での仕事は終了である。

Kの発表と質問に対応する真摯な態度は素晴らしいもので本当に感心した。Kとは時に意見が衝突することもあったが、冗談好きの彼の明るい性格もあって、一度もエモーショナルな問題に発展したことはなかった。またチーム内の無数のコンフリクトも彼の仲裁なしには解決しなかっただろう。このチームの真のリーダーはKであったと今になって思う。

Lも口調が相変わらずな部分は止むを得ないとしても、彼女なりに精一杯頑張っていた。自然と僕の中でわだかまりも溶け、笑顔にはなれないまでも"Great job"と手を差し伸べる。Lは一瞬困惑した様子だったが、握手に応じてくれた。嫌な気分を引きずったまま帰るのはお互い気持ちが悪いだろう。するとLも肩の荷が下りたように陽気になり、僕やN、Fにいろいろと話しかけてくる。

Nからは「表面的な会話だったなー」と後でからかわれてしまったが、確かにそうだったかもしれない。僕の中でまだ全てがクリアになっていた訳ではないという意味で。でもそれでも良かったのだと思う。時には表面的な会話も必要なのだ。お互いが少しだけ譲歩して次のステップに進んでいくための大人の表面的な会話。人生31年にしてそんなことに気づくのは遅すぎるのかもしれないが。

最後に僕がこっそり持参して冷蔵庫で冷やしておいたシャンパンを披露。喫茶ルームから拝借した紙コップを全員に配ってメンバー5人で祝杯をあげる。Kからは「みんなに黙って持ってきたのか?お前はなかなかSneakyだな」といつもの人懐っこい笑顔と独特の言い回しで間接的にお褒めの言葉をもらう(と勝手に解釈した)。このシャンパンは実はKからもらったものだった。チーム発足当初にパリ行きを希望するKと僕がかぶってしまい、一時はくじ引きしかないというところまで発展したのだが、一晩明けて考えた後、特にパリに固執する必要もないという結論に至り、パリをKに譲ってあげる代わりに「シャンパンを一本買ってきてくれ」と冗談半分で条件を付けていたのだが、パリから帰ってきたKは律儀にシャンパンを持って現れた。

夜はN, FとCovent Gardenへ出かけて最後の夕食をとり、バーを二件ほどハシゴしてホテルに戻る。Fは交換留学生という立場だったので、今日をもって正式にTuckの学生ではなくなる。日本贔屓の彼は日本でインターンをしながら仕事を探すということなので、また東京で会える日も近いだろう。彼は弱冠23歳で、経験という意味ではまだまだ未完成の若者なのだが、このチームから学んだことは彼の人生においていろいろな意味で大きいのではないだろうか。

そんな訳でホテルに到着。荷造りをして、明朝ロンドンを離れる。毎日窓から眺めていた荘厳なタワーブリッジとも遂にお別れである。この光景は将来折りに触れて思い出すことになるかもしれない。今日夕方になってロンドンで初めて青空を見た。今後の人生における様々な局面、修羅場でも、最終的にこんな青空が目の前に広がってくれることを願う。

Thursday, December 16, 2004

FSIB DAY 14: Evil 

今朝はやや寝坊気味で、9時ぎりぎりにオフィスに滑り込み、デスクでサンドイッチを頬張る。メールを読みながら、さああと二日、気合いを入れて頑張るかと思っていた矢先、またしても問題発生…

昨日の夜、今回のプロジェクトでお世話になったSteveから「うちの部門は金曜日のプレゼンテーションに参加できないから、必要だったら席に立ち寄ってくれ。君たちの練習にもなるだろうし、何か役に立てるかもしれないから」と僕が声をかけられた。その話をVPから伝え聞いたLから「Rioがフォローアップしてくれると助かる」とメールがあった。

そこで隣りに座っていたLに「例の打合せなんだけど、何時くらいがいいかな」と軽い気持ちで声をかけると「あなたが話を聞いたんでしょ!あなたが決めなさいよ!」という意味不明の言葉を浴びせられる。気を取り直して「いやでも、何時だったら都合がいいかなと思って…」と聞き直すと「だから彼に聞きなさいって言ってるでしょ!」となぜか声を荒げるL。後ろで聞いていたKが「俺たちは今日フレキシブルだから何時でもいいよ」とフォローしてくれたのだが、僕はもう100%切れてしまった。日本語でぶつぶつ暴言を吐きつつ、ペットボトルでも投げつけてやろうかと思ったのだが、それは何とか思いとどまった。

ただもう今後Lと口を利くことはないだろう。遅れて会社に到着したNとFに「俺はもうあいつとは二度と口を利かないから」と宣言。Nは僕に一日先立って昨日からほとんど口を利いていないので、「何?何があったの?」とちょっと嬉しそうである。僕は完全に頭が沸騰してしまっていたので「後で話すから」とだけ言ってとにかく仕事に取り掛かる。

Lもさすがに僕の雰囲気は察知したようだったが、もう僕には関係ない話である。「本当に私が悪かった。どうか許して下さい」と懇願されたら考えてもいいが、Lの性格上、間違ってもそんなことは起らないので、僕たちの協調関係も今日で終わりである。Kが呼びかけた打合せでもLとは一切口を聞かない。目も合わさない。作業分担が決まると「もういいよね」と足早に会議室を出る。NとFも僕に続いてあっと言う間に解散。これまで必ず一緒に出かけていた昼食も、Lには声をかけずNとFと三人で出かける。

午後には懸案事項がとりあえず解決したらしく、今度は気味が悪いくらい明るく振舞うL。甲高い声で「Rio、何か手伝えることある?」というので、目を合わせず「ない」と一言だけ返す。ひどい態度のようにも思えるが、これまでLがずっとしてきたことであり、因果応報である。すると今度はFに「何か手伝えることある?」と聞いている。

夕方に今度はVPとの打合せがあり、明日の最終プレゼンについていくつかアドバイスをもらう。この人が意外に細かい。日本の会社の中間管理職を見ているようだ。VPが去るや否やNとFは即退席。僕はまだパソコンを開きっぱなしだったのだが、最早Lと同じ空気を吸うのも嫌なので、そそくさと片付けて無言で立ち去る。夕食も当然別行動。板ばさみになっている形のKには若干申し訳ないので、彼の作業状況をひと通り聞いてコメントした後、先に帰らせてもらうことを告げる。Kは数日前から彼女がホテルに合流しているので問題ないだろう。

Lと言えばどうしても忘れられないエピソードが一つある。先週、朝の電話会議でチームが崩壊寸前になった後の話だ。僕がNの気持ちも代弁し、「おそらく文化の違いもあると思うけど、さっきの君の言い方は良くないよ。「あんたがやったんだからあんたが決めなさいよ」じゃなくて、「どうやったらうまくいくか一緒に考えよう」っていうのが僕たちのスタイルなんだ」と諭すと、彼女は顔色一つ変えず、「私は将来日本で仕事をするつもりもないし、実際することもないと思う。だから私が日本の文化を学ぶ理由は何もない。むしろあなたたちがこっちに来てるんだから、あなたたちが順応すべきじゃない」と言ったのだ。

ある意味彼女の言っていることは正しいのだと思う。ただ感情的にとても受け入れ難いと感じるのも事実だ。Lは物事全てを1か0で考えるタイプである。それ自体悪いことではないのだが、1か0かの判断基準に歪んだバイアスがかかっているのと、ヒューマンインターフェース(話し方、伝え方)が極めて悪いので、常にコンフリクトを生み出す結果になっている。東海岸に行けばそんな人もいていい経験になるだろうと入学前は漠然と考えていたのだが、彼女はその期待に見事に応えてくれた。アメリカ人を一般化するつもりは毛頭ないが、彼女のような人間も実際に生息しているのである。


さて今晩遅くにMとRがアムステルダムから帰って来る。同時にMの奥様が合流するので、Rから「Rioの部屋に一晩泊めてくれないか?」とメールが届く。先週Mが「妻が来たらRは部屋から蹴り出す」と冗談めかして言っていたのだが、Rは本当に蹴り出された形になった。ロンドンのパートナーが女性のLだったために僕はこれまで部屋をシェアせずに済んでいたのだが止むを得ない。しかもRは今や親友の一人であり、断る理由もない。

いよいよ明日、正午から最終プレゼンテーションである。

Wednesday, December 15, 2004

FSIB DAY 13: Big Issue 

ここのところLとNが修正したモデルの最新バージョンが一日に何度も飛び交っているので、それにキャッチアップするのもなかなか大変なのだが、どういう変更が行われたのか理解することは最低限必要なので、ホテルに戻ってからざっと目を通すようにしている。

その一連のメールの中でLから「簡略化するため」という理由で、大胆な仮定に基づくアウトプットの根本的な変更が通知された。僕は直感的に「それはクライアントの立場からすれば使い物にならないのでは」と危惧していたのだが、自分の作業に追われて何となくそのままコメントもせずに放置していた。

夕方近くになってNと話をしながら、やはりここは重要なポイントだと認識し、日頃からLに近いKにどう思うか相談をもちかける。するとKは「そんな話は聞いていない。どうしてそんな重要なことを勝手に一人で進めるんだ」とLに詰め寄る予想外の展開(本当はメールをしっかり読んでいれば気づいているべきことなのだが)。Lもこれに猛反発して、またしても良くない雰囲気(もう慣れました)。Kがいくら「そういう感情の問題ではなくて、何がクライアントにとってより有用かという話をしているんだ」と言っても後の祭り。Lはもう完全に冷静さを失っている。

結局双方譲らないので「じゃあVPのところに行ってどういう方法がより好ましいか確認しに行こう」ということに。ここでもLは「あなたたちが一緒に来てほしいって言うんだったら行ってもいいけど」と全く気が乗らない様子。KもNも「いい加減にしてくれ」という感じでやや諦めモードになっていたが、僕が「大事な話だから一緒に行こう。君もいるべきだから」と無理やり連れ出す。

VPとの緊急会議ではいろいろ議論があったのだが、簡略化すると「そのロジックにも一理あるが、それだけでは意思決定ツールとして不十分。一度に大量の設備投資をすることは好ましくないので、我々はもう少し保守的な立場で物事を考えている。それを踏まえてもう一度アプローチを考えてみてくれ」とのコメントをもらった。僕としては全く予想通りの答えである(僕が経営者の立場だったらきっと同じことを言うだろう)。

VPの話を聞いてLも少し落ち着きを取り戻し、より実用的なモデル(より複雑化したモデル)に一生懸命取り組み始める。今日はLとNが険悪な雰囲気になってきたので、Kと僕が双方の意見調整役として奮闘するが、途中で今度は僕とKの意見が対立。二人ともペンを投げて頭を抱える。なかなかうまくいかない…泣いても笑ってもあと二日である。


FSIB DAY 12: Research 

一日中リサーチ作業。本来のプロジェクトの仕様とは関係の薄い部分だったのだが、VPから「スプレッドシートだけでなくQualitative Analysisのドキュメントも残してほしい」と言われたため、形だけでも英、仏、独の情報を揃える必要が出てきた。仏、独は現地でメンバーがヒアリングをしているので何かしら資料があるようなのだが、英国残留組の僕は英国に特化した調査をする時間がなかった(求められてもいなかった)ため、付け焼刃で英国の競争環境についてリサーチし、文章にまとめる。あまり意味がない作業と分かっているだけに、今日はぐったり。

FSIB DAY 11: Peaceful Day 

パリ、フランクフルト組が合流、1週間ぶりにメンバー5名が顔を揃える。午後からのSVP, VP, CTOとの打合せに備えて、朝から全員で準備を進める。

打合せでは最初にKがロジックについてひと通り説明した後、Lが実際のモデルを操作しながら、デモンストレーションを行った。実物を見せたことで説得力も増したらしく、普段は物事に対して非常に批判的というCTOをして「とてもいいんじゃないか」と納得させることができた。先週一方的にやられたSVPもあまり口を挟むことができない。我々との窓口になっているVPも面目が立ち、「その調子で頑張ってくれ」ととても満足してくれた様子である。打合せ後はみんな自然と感情も高ぶって明るくなる。

夜は僕が検索した日本料理店NOTOへ。持参したガイドブックには乗っていなかったのだが、ウェブでの評価が高かったのと、ホテルから比較的近かったのでここを選んだ。行ってみると日本人スタッフが対応する本格的な日本食で、メンバーも大満足(僕は微妙に高くないエビフライカレーを注文)。「現地では一度だけ教授がご馳走する」ということになっていたのだが、打合せの成功もあってか、食事後にOwens教授から「今日は僕が出そう。素晴らしいレストランを見つけてくれてありがとう」と御礼を言われる。喜びつつも、Nと二人で「最初から教授のおごりって分かってればもっといいものを頼んだのに」と地団駄を踏む。

Sunday, December 12, 2004

FSIB: Weekend 2 

土曜日。さすがに疲れがたまっているのか、昼過ぎにやっとの思いでベッドから這い出す。二日酔いをシャワーで洗い流し会社へ向かう。顔なじみの守衛さんに入り口を開けてもらい自分のデスクへ。ここでびっくり。人間が一人もいない…Kからパリのオフィスも同じ状況だったと後から聞いたのだが、それにしてもこの大きなフロアに一人も人間がいないというのは異様な雰囲気である。欧州の人は週末は絶対働かないのだろうか。

夜はMと二人でPiccadillyの中華街にある日本料理店"Ikkyusan"へ。中華街だけに店は中国人によって運営されているが、味噌汁、手巻き、カツ丼のどれも期待以上に美味しかったので二人とも大満足。Mはブラジルで日本料理店によく行っていたようなので、舌も肥えている。プロジェクトの話から卒業後の生き方まで、いろいろな話をする。Mとは世界観や哲学がとても似ている。間違いなく生涯付き合っていける友人の一人である。

日曜日。今日アムステルダムに発つはずのMとRから内線電話でたたき起こされる。午後7時だと思っていたフライトが実は午前7時で、完全に乗り過ごしたというのである。彼らは「高い」という理由で部屋でインターネットを使っていないので、まだ寝ぼけたままの僕の部屋で他のフライトを検索したり、電話で問い合わせたり大忙しである。思わぬ追加出費に二人ともかなり意気消沈していたが(そこまで落ち込む必要ないんじゃないかと思うくらい)、とにかく夜の便が確保できたようで、一安心。不要な荷物を僕の部屋の片隅に置いて慌しく出発していった。彼らは最終プレゼンテーションの前日(木曜日)に再合流するので、暫くお別れである。

入れ代わりでN, F, Kが今晩遅くロンドンに戻って来る。明日VP, SVP, CTOとの重要な打合せがあるのでLと僕はそれぞれ作業を進めている。が、Lは自分で手をあげた仕事が思ったように進まないらしく、メールからも相当苛々、ヒステリックになっている様子が伝わってくる。今週は最終報告を控え、更なる混乱が予想されるが、自分のペースで泰然自若と過ごしたいものである。

Saturday, December 11, 2004

FSIB DAY10: Exhausted 

一日中複雑なコストデータの収集に奔走し、疲れ果てる。本来こういうデータは企業の中で蓄積されていてしかるべきだと思うのだが、社内の誰も正確な数字を把握していない。欧州ではまだ実績が少ないということを差し引いても、ちょっとお粗末である。それにしても今回のプロジェクトのスコープは本当に多岐に渡っていて、企業の経営判断そのものと言っていい。3週間で全てやれと言われても無理が出てくるのはやむを得ない。

夜はロンドン出身のBhanuの案内でロンドンの街へ繰り出す。L, R, Mを連れてSloan SquareのレストランOrielで待ち合わせ。それほど久しぶりではないのだが、こうやってハノーバー以外の場所でTUCKの友人に会うのは何だか嬉しい。まだやることがたくさん残っているので、食事が終わったら全員すぐ帰ることになっていたのだが、Bhanuが再三「折角ロンドンに来たんだから金曜日くらい遊びに行こーぜ」と言ってきたのと、メンバーが「Rioは行って来い」と僕を生贄として差し出したので、断る訳にもいかなくなった。

Bhanuは生粋の遊び人で「ハノーバーは退屈すぎてもう耐えられない」と断言している。今日も片時も携帯電話を離さず、まめに友人と連絡を取り合いながら夜のロンドンを案内してくれる。「Londonerの目から見たロンドンを見られる機会もなかなかないだろ。だから来て絶対正解だよ。折角来たのに仕事だけして帰るなんて馬鹿げてる」と言われ、確かにその通りだなと思う。

Bhanuが住んでいるマンション(超高級でびっくり)の前を通り、South Kensington にあるEclipse という会員専用のバーへ。BhanuのBoarding School時代からの親友Davidと落ち合う。店内はかなり狭いのだが、知る人ぞ知るロンドンでも有名なバーらしく、次第に立錐の余地もないほど込み合ってくる。

その後、他にも友人が合流し、今度はタクシーでEast London にあるHot Chillsというバーへ向かう。ここも店内はロンドンの若者でごった返していて、満員電車状態。ここには更にBhanuの友人が既に10人以上集まっている。何人かに紹介してもらったのだが、いかんせん店内が騒がしく声が聞き取れないのと、友人同士のバカ騒ぎに一人部外者としているのも何だか手持ち無沙汰となり、申し訳程度にカクテルを飲んで先に帰らせてもらうことにする。

FSIB DAY9: Destruction? 

朝一から最近恒例の電話会議。パリ、フランクフルトのメンバーと現状報告、今日の予定を交換する。しかし前日のVPとの打合せで「大幅な方針転換があった」というLの説明で会議は紛糾。

「クライアントの指示だから止むを得ない。とにかくこれまでやって来たことはUselessということなんだから、簡素化したモデルを作り直すしか選択肢はない」と言うLとK、「プロジェクトの中盤を過ぎて当初の仕様と全く異なることを言われたって、そのまま受け入れる訳にはいかない。大体これまでこのモデルにNがどれだけ時間とエネルギーを使ってきたと思ってるんだ」と主張する僕とNが完全に対立。Nからは脱退宣言とも取れるような投げやりな言葉があり、緊張が走る。

昨日のVPとの打合せは自分もその場にいながら、そこまで重要な方針転換があったとは認識できていなかった。ただLが「そう言ってたでしょ」とつっけんどんに言うからにはそうなのだろうと思っていたのだが、真偽を確認するために、再度Lと僕でVPの部屋を訪れることにする。直前にLと立ち話をしたのだが、「従来型モデルの有用性を説明してVPを説得しようと思う」という僕に対してLはあまり良い顔をしない。全く新しい簡素化モデルを作るとなれば弁舌巧みなLとKが完全にプロジェクトを掌握することになる。どうやらチーム内でのパワーゲームの様相を呈してきた。

実際に打合せが始まると、Lは質問するというよりは「こういうことで良かったですよね」と強引に話を終わらせにかかる。今日ばかりは僕もフランクフルトのNを代表していることもあり、マシンガンのようなLのしゃべりに割って入って「これまでどういうことをやってきたか説明させて下さい」とパワーポイントの資料や実際のモデルを見せながら、VPの真意を確認する。

するとあっけないことに「いやいやNPVやOptimizationがUselessだなんて言ってないよ。アウトプットとして必要なのはこれとこれなんだ。だから君たちがやって来たことは大きく間違ってないし、そのまま進めてくれて構わない」というコメントをもらう。今朝の議論は一体何だったんだ…

Lは自分がチームを混乱させたという認識があるのかないのか「良かった、良かった。これでまたみんなハッピーでしょ」とあっけらかんとしている。僕は早速Nに電話で状況を説明。「これまでの路線で大丈夫だから心配するな」と伝える。さっきまで完全に対立していたKからは「VPを説得したんだって?でかした!」という無邪気なメールが届く。説得したというよりもLの認識が間違っていたというだけなのだが。

それにしても毎日事件が起こるプロジェクトである。後にも先にもこんなジェットコースターのような経験はもうないだろう。

Wednesday, December 08, 2004

FSIB DAY8: It's My Day 

爆発してしまいました。Lが僕に対してどうもよくない態度を取り続けるのと、必要な情報を何度かシェアしてくれなかったのが原因である。努めて冷静に、でも厳しい言葉で状況の説明と改善を求める。Lも当然持論をまくし立てて譲らない。4人の和やかなランチタイムが一瞬にして凍ってしまった。

かなり険悪なムードになったのだが、とにかくこのプロジェクトが成功するために生産的な方法でやって行こうという提案をする。彼女も悪気はないということなのでそれを信じることにし、これからは積極的にコミュニケーションを取っていくことで一致。いつものように一旦言いたいことを言ってしまえば僕には何のしこりも残らないのであっと言う間に仲直り。日本人同士だとなかなかこうはいかないだろう。

午後一から三つ続いたミーティング(僕とLとクライアントのみ)は期待通りとても有意義なもので、予めリストアップしていた質問の多くが解決した。打合せの合間には早速Lに「今いくつか理解できない部分があったから少し話できる?」とお願いする。Lも非常に丁寧に対応してくれたので不明な点がクリアーになってとても助かった。打合せ後は分業でサマリーを作成、メンバーに状況を報告する。明日更に二つ打合せがあるが、それでほぼ必要な情報が出揃うはずである。

夜はRとMがフォーカスグループに出かけてしまったので、Lと二人でホテルに戻り、荷物を置いてから食事に出かける。Lと二人で食事に行くなど昨日までだったら考えづらかったが、打ち解けてゆっくり話ができたので、お互いにとって有意義な時間だったと思う。

Lは典型的な保守的アメリカ人で、特定の仲良しグループ以外とはほとんど付き合っていない(という仮説がこの夕食時の会話で立証された)。1年半近く同じ学校にいながら日本人、韓国人、中国人の名前をほんの数人しかあげられないのである。Lは根っから悪人という訳ではないので、単に興味がないというか、育った環境が自然とそう振舞わせているのだろう。

所詮住む世界が違うのかもしれないし、一時的、表面的な関係かもしれないが、それでも納得のいかないことがあれば自己主張をすることで存在を認識してもらい、対等な関係を築き、仕事上で前向きな協調関係を作る。このプロセスは米国に来てから苦しみながら学び、着実に進歩している点と言えるかもしれない。

FSIB DAY7: Nothing Much 

今日は鍵を握る二人との打合せがある予定だったのだが、二人とも多忙で結局キャンセルとなってしまった。ということで今日は若干仕事も停滞気味。僕とLはそれぞれウェブや社内のドキュメントからデータ収集に励む。

ところで毎日午後6時を過ぎるとオフィスがほとんど空っぽになってしまう。この会社が特殊なのか、欧州全体に言えることなのかどうか定かではないが、無駄話は多いし、あまり仕事をしない人たちである。一方で一部の優秀な社員やエグゼクティブは超多忙であり、誰が会社を支えているのかは一目瞭然だ。


FSIB DAY 6: Stress 

VPが米国出張ということで、代わりにSVPとミーティングが午後に入った。このミーティングはプロジェクトがしっかり進んでいるかどうかをクライアントが確かめるという意味合いが強く、それなりに準備はしているつもりだった。

ところがSVPが最初からかなり厳しい態度で質問攻めにしてきたのと、パリ、フランクフルトのメンバーには音声がよく伝わっていなかったのとで、非常に後味の悪いミーティングとなった。現場にいたLと僕がしっかり対応できれば良かったのだが、二人とも満足な回答ができず、かなり悔しい思いをした。

別プロジェクトとして動いているMとRも参加したのだが、彼らも厳しい言葉を浴びせられた。僕たちと違ったのは、MとRが最後まで食い下がって、最後にはSVPに渋々ながら「まあいいんじゃないか」と納得させたことである。僕も彼らに見習わなければいけない。

ただMは珍しくエキサイトして、ミーティングが終わった後も「あいつは何にも分かってないくせに文句ばっかり言ってきた。俺はもっと言い返してやるべきだった。失敗した。今度は絶対徹底的にやり返してやる」と憤懣やるかたない表情。落ち着きのない様子でその辺をうろうろしながら今にも誰かに殴りかかりそうな勢いである。でもMは十分よくやったと思う。

さてこの一件があったからかどうか、Lとの関係がどうもぎくしゃくしてきた。適切な表現ではないかもしれないが、共通の敵がいなくなるとエゴが出るのが人間というものである。Lも元来強烈な個性を持った人なので、当初の心配が現実になりつつある。

僕もLの態度にはかなり頭に来ていて噴火寸前だったのだが、MとRと食事をしながら話を聞いてもらって少し落ち着いた。二人とも「何かあったら俺はお前の味方だから心配するな」と言ってくれた。心強い仲間である。ホテルに戻る頃にはすっかり怒りも収まり「明日からまた仲良くやるか」と思っていたところ、Lから「今日はストレスが溜まってるみたいだったけど大丈夫?」とのメールが。「あなたのせいでした」と言える訳もなく、「今はもう全然大丈夫。ありがとう」と返事をする。

Monday, December 06, 2004

FSIB: Weekend 1 

土曜日はK, M, N, Fと5人でロンドン観光に繰り出す。個人的にはロンドンの観光ポイントはほぼ見尽くしているので特に新鮮味はなかったのだが、それにしてもよく歩いた。Tower BridgeからBig Ben, Westminster Abbey, Buckingham Palace, Hyde Parkまで合計4時間近く歩いたのではないだろうか。夜はホテルにこもってNとモデル作りに励む。夕食を食べそびれる。

日曜日は朝8時からホテルで打合せをした後、Kはパリへ、NとFはフランクフルトへ向かう。それぞれヒアリングを中心とした現地調査を行うのが目的である。僕とLはロンドン居残り組。RとMはアムステルダムに飛ぶ予定だったのだが、一週間予定がずれることになり今週もロンドン。RとMは実質的に別プロジェクトとして動いているので、今週はLと二人で大きな責任を負うことになる。

午後は伸びきった髪を切るために美容院を予約したのだが、ロンドン三度目だと言うのに完全に迷子になって右往左往した挙句、漸くたどり着いた頃にはもう一杯で入れなかった。しっかり場所を確認しておかなかったのと、道行く人に場所を聞いたのがいけなかった。それにしてもロンドンは標識があまりなく、道路も入り組んでいるのでとても分かりづらい。方向音痴の僕には住みにくい街である。

街と言えば、ロンドンは車の運転が異常に荒い。ニューヨークやボストンの比ではない。信号のないところで通りを横切ろうものなら、逆にスピードをあげて本気でひきにかかってくる。欧州出身のFに聞いてみると、横断歩道以外では絶対的に車の権利が強いようで、ひかれても文句は言えないとのこと。歩行者が絶対的に強い日本とは全く異なるので本当に気をつける必要がある。

夕食はR, MとBond Streetにある日本料理店のWagamamaへ。ラーメンを頬張りながらTuckのことについていろいろ話をする。僕は既にノスタルジックになっているが、二人もそろそろ卒業が近いということを感じて始めているらしい。Rとここまでゆっくり話すのは初めてかもしれない。彼の考え方はとても僕に近いことが判明。話も盛り上がって楽しい一時を過ごす。二人のおかげで来週以降に山積した課題への不安が少し和らいだ。

Sunday, December 05, 2004

FSIB DAY5: Frustration and Learning 

長かった一週間も漸く金曜日を迎える。午前中は打合せの連続。最初の3日間は、ほとんど違う言語ではないかと思われるようなイギリス英語に気おされていたのだが、そんなことも言っていられないので、前日から積極的に担当者をつかまえては、不明な点について質問攻撃や打合せの設定に奔走する。

午後から始めたモデリングの作業は思ったように捗らず、夕方にはすっかり疲弊しきってしまったのだが、Nの助けを借りて漸く出口らしいものが見えてきた。ちょうど調子が上がってきた頃に夕食の時間となり、本当はそのまま続けたかったのだが、"Come on, it’s Friday night."というeasyなメンバーの言葉に誘われてPiccadilly Circusまで夕食に出かける。

T問題があってから逆に7名の結束力が高まり、食事時などはユーモアセンス抜群のMを中心に笑いが絶えない。スーツを着た大柄なMはどこからどう見ても「部長」という形容がぴったりなので、"Bucho"というあだ名を定着させた。Kは名前の音が「小錦」に似ているのでそれで行こうと思ったのだが、本人が嫌がったため止む無く「あしたのジョー」で妥協する(顔がそっくり)。

ホテルに帰ってからは更にNとモデリング作業。Solverを使ったシナリオ別のコスト分析が相当複雑であることが判明、エラーメッセージが出る度にロジックのどこに誤りがあるのか、二人で頭を抱えつつ、夜中の2時半まで格闘する。

FSIB DAY4: Decision made 

ついにTがチームから離れることになった。今朝は午前7時からクライアントのVPとの打合せが入っていた。それに先立ってLから「TのせいでTuckの学生は打合せで居眠りしてるって噂になってるらしい。自分たちを雇ったVPも社内できっと笑い者にされてるんじゃない」という話を聞いて遂に僕も堪忍袋の緒が切れた。この7時からの打合せも何と彼は無断で欠席している。

欧州各国のプロジェクトを回っているお目付け役のOwens教授が昨晩ロンドンに到着、この打合せから合流した。VPは厳しい表情で、このプロジェクトに対して危機感を抱いている様子だったが、ひと通りメンバーと今後の進め方や細部について議論した後は、少しだけほっとした様子で「今後の仕事に本当に期待している」という言葉を残して去って行った。

その直後、Owens教授へTの処遇について決断を迫る。ポイントは明快。プロジェクトの生産性、Tuckの評判、クライアントのVPの社内での評判、そして同社からオファーをもらいたいと思っているLの評判の四点である。教授の「午後に私がTと話をして最終的に決断する」という言葉でその場は収拾したのだが、結局Tが自主的にプロジェクトから身を引くということで決着。Tは明日ロンドンを後にする。

Tuckの歴史でもこういう事実上のキックアウトは二件程度しかなかったということで、本来起りえない経験をすることになった。このような事態になってしまったことはとても不幸であり、帰り際に手を振って去って行くTを見て少し可愛そうという気持ちになってしまったが、チームとしても個人としてもこれ以外に良い選択肢は見つからなかった。

それにしても激動の四日間である。これ以上内紛に振り回されている暇はない。


FSIB DAY3: Conflict 

またしても衝突発生…昨日のことに懲りず、時間がない中でTが打合せ中に議題と全く関係のない話題を延々とし続けるので、今度はLが切れた。するとTは「僕は今とても冷静だ。でも君は冷静じゃない。僕に対して良くない態度を取っている。だから僕は席を外させてもらう」と部屋を出て行ってしまう。

一瞬沈黙が流れたのだが、今のはなかったことにして一斉に作業に取り掛かる。途端にものすごく効率が上がり、今後のワークプランが何となく形になってくる。途中Lが「やっぱりTを呼び戻しに行った方がいいかな」と言ったのだが、僕は「いいよ、行かなくて。こっちの方が効率的でしょ」と前向きな提言?でとにかく仕事を進めることに集中する。

それにしてもTはこれまでに見たことのないタイプだ。T以外にも個性の強い学生が集まってはいるが、どうやら全員が「あれはない」という感覚で一致してしまったらしい。KとLと立ち話をしながら「二人が先に切れてくれるから僕は穏やかな気持ちでいられて助かるよ」と言うと、Kが「毎日指名制で怒り担当を持ち回りにするのはどうだ?」と切り出す。面白すぎる話だが、このチームだけは本当に何が起るか分からない。普段とても温厚で感情を表に出さないFさえ、はっきりとTに対する反論を口に出し始めた。

肝心のプロジェクトの方は、各部門の意見や関心事がそれぞれ全く異なるので、聞けば聞くほど頭が混乱していたのだが、最後に2時間ほど時間を割いてくれたOliverがとても親切、かつ場の雰囲気が読める頭の良い人で、僕たちが必要としている道筋に一歩近づけてくれた。

社内でそれぞれ利害が一致しない人たちから話を聞きだし、社内各所に散らばっている情報を一つにまとめて全社的な戦略やモデルに組み込んでいく。一見非生産的に見える時間も多いのだが、考えてみればこれは正にコンサルティングそのものである。早口のイギリス英語が飛び交う社内では重しをつけて泳いでいる魚のような気分なのだが、制約のある中でどれだけプロジェクトに貢献していけるのかが試されている。まずは打合せのアジェンダ作りや要点の整理など、事前準備は怠らないようにしている。

FSIB DAY2: A Long Day 

状況悪化。一日中、様々な部署のマネージャーが入れ代わり立ち代わり現状について説明してくれたのだが、Tが既に知っていなければならないはずの初歩的な質問を連発、メンバーの間にしらけムードが漂う。そうかと思えばTは今度は打合せ中に居眠りする始末。

ホテルに戻った後、メンバーで自主的に簡単な反省会を開く。Kがその場で一般的な話として「今日俺はとても失望したし、とても恥ずかしい気持ちだった。こちら側の不準備を露呈させるような初歩的な質問や関係のない質問が多すぎた」と切り出したのだが、事実上T個人を名指ししているのは明らかで、Tが更に態度を硬化。語気も荒く、持論をまくしたて、顔も赤らんでくる。一触即発の危険な雰囲気に「これどうなっちゃうの」と一瞬気をもんだが、ここ一番に強いRが弁舌巧みにうまく仲裁。僕も基本的にはKと全く同意見だったのだが、なるべくTの気持ちを逆なでしないように、慎重に改善策を提示してみたりする。

Rの調停で話がまとまったところで夕食へ出かけようということになる。ところが夕食でまたひともめ。今日はTの言うことを聞こうということで、言われるがまま電車に乗り込む。しかしこれが遠い。結局環状線のほぼ反対側まで行く羽目になり、思わずFと「なんでこんな遠くまで来るの?」と顔を見合わせる。

インド料理店が並ぶ通りで店を物色していると、今度はベジタリアンのRと肉を食べたいNの間で意見が対立。どちらも譲らないので、じゃあ別れるかという話になったのだが、今度はなんとTが調停役となり、Nに「一度だけベジタリアン料理を試してみろ。それでダメなら今度は止めればいい」となだめに入る。

そんなすったもんだがありつつ、夕食は和気藹々と楽しい時間になった。特にラテンのノリのMとはとても気が合う上に、彼のしゃべり、表情、態度がいちいち壷にはまり、腹を抱えて大笑いした。以下、帰り道にMが教えてくれたブラジルの格言。

Number 1: You shouldn’t worry about small things. Number 2: Everything is a small thing.

思わず"That’s deep"と唸ってしまった。もう一つ。

If there is no solution, that problem is solved because we know there is no solution.

なるほど。どうりでMが仕事を真面目に考えない訳だ(笑)。ただMはいつも偽悪者ぶって「勉強なんて真面目にやってられないよ」とか「適当にやって最後に"Sorry, man. That’s it."って言っときゃいいんだ」なんて言うくせに、実は責任感が強く、陰でしっかり仕事をしていたりする。なかなか魅力的な男である。

Field Study in International Business (FSIB) 

次学期の選択科目としてカウントされる現場でのコンサルティングプロジェクトである。ほぼ半数のTuckiesがアジアから南米、欧州など世界中に散らばっていく。クライアントが旅費や滞在費、経費を支払うという点で、従来の授業よりも要求レベルの高い緊張感のあるプロジェクトである。

僕は米国系某通信会社の欧州でのサービス拡大戦略プロジェクトに指名された。メンバーは、インド系のK, R, アメリカ人のL, ブラジル人のM, ドイツ人のF, フランス人のT, 日本人の僕とNというかなり国際色豊かな顔ぶれである。個性の強い面々で、一覧を見たときの第一印象は「このチーム崩壊しないかな」であった。あまりよく知らない学生については親しい友人に聞いてみたりしたのだが、彼らの意見を総合すると「確かに個性の強い人が何人かいるけど、仕事はしっかりするだろうし、大きな問題にはならないだろう」ということだったので、とりあえずひと安心していた。

ところがロンドン入り後、初日からコンフリクト発生。原因は翌日のクライアントとの初顔合わせに備えてミーティングをするかどうか、夕食の場所を事前に調べていくかどうかという実に些細なことである。僕のスタンスは「ミーティングは当然すべき。夕食の場所はどうでも良く、早めに済ませて帰るべき」である。

ところがロンドンでも外れに位置するCityではレストランを見つけるのも一苦労。結局歩きに歩いて1つ先の駅までたどり着いたところでTが「電車に乗ってもっと店があるところに行こう。10時半には帰れるだろう」と言い出すと、Kが「俺は賛成できない。そんなに時間をかけるべきとも思えない。悪いけど俺は帰る」と切り出した。僕も当然帰る派。Fも続いたので、結局3対3に割れてしまった。僕とKとFは近所のPizza Expressでピザを食べてホテルに戻る。初日からこれでは先が思いやられる。

This page is powered by Blogger. Isn't yours?