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Saturday, February 26, 2005

Tuck Squash Tournament 

何となくサインアップしていたスカッシュのトーナメントが始まった。こちらではどうやらトーナメントという言葉は必ずしも日本人がイメージする「勝ち抜き戦」とは違うようだ。今回も勝ち続ける限り試合があるのかと思いきや、1年生、2年生それぞれ30人ずつがマッチアップし、勝利数が多い学年が勝つというシンプルなルールである。

スカッシュはこちらに来てから初めてプレーしたのだが、あまり没頭したとも言えず、今シーズンもこのトーナメントの日程が決まるまでゼロ。慌ててAjiに相手をお願いして1時間ほど練習。効果的なショットについていちいち議論しながらプレーしたものの、どうも去年の感覚が戻らない。

そしてあっと言う間に当日。相手はMikeという会ったことのない1年生。イントラネットで写真を見ると、いかにも体格が良く、自信に溢れたアメリカ人という感じ。うーん、やばい。個人戦ならともかく、団体戦なので絶対負けたくない。しかも結果が公開される。ということで急遽試合前の1時間、スカッシュ経験のあるTe-LingとTak Waiにお願いして二度目の練習。Te-Lingが必勝法の効果的なアドバイス(サーブの落とし所、プレー中のポジショニング、フットワーク等)をしてくれたお陰で見る見る上達。彼らを凌ぐ勢いにTe-Lingも「あら、教えすぎたかしら。これぐらいにしとかないと」といつもの冗談で和ませてくれる。

あまり疲れすぎないように休憩していたところ、相手のMike登場。でかい…身長もでかいが、水泳をやっていたということで逆三角形の屈強な体格。力技のスポーツなら勝機なしだろう。試合前に自己紹介も兼ねていろいろ話をすると、この夏、日本を含むアジア各国を1ヶ月以上かけて回ったということが判明。真夏に東京を自転車で走り回って死ぬかと思ったと言ってたが、そりゃそうだろう。日本の夏は暑いんですよ。その他、築地の市場やクラブ(当然語尾が上がる方)が楽しかったらしい。非常に気さくなナイスガイである。

で、軽く練習した後、試合開始。Mikeは「週二回くらいスカッシュやってる」ということでかなり警戒していたのだが、始まってみるとサーブ、フットワーク、タクティクス、全ての面で僕の方が優っていることが分かり、自信を持ってプレーできた。結果、9-2, 9-4のストレートで圧勝。最後の方は何だか申し訳なくなり、不要なポイントを献上してしまった。相手を最後まで叩ききれないところが日本人の勝負弱いところだろう(1セット目は8-0から躊躇してしまったが、9-0で勝つこともできた。2セット目も8-2から2点失った)。この勝利は練習に付き合ってくれたAji, Te-Ling, Tak Waiのお陰である。

試合が終わったところでMikeから「試合はもうお前の勝ちだけど、もう1セットやらないか?」という申し出があったので、"Okay"と答えたのだが、僕にはもう体力もモチベーションも残っていない。打ちやすいところにボールを返し、際どいボールも本気で追わず、「調子上がってきたな」とか適当にMikeを褒めつつ、2-9で完敗。彼も気分良さそうに帰って行ったし、まあ良かった良かったと思いながら、共有ドライブ上の結果シートに「2-0」という結果を記入する(中には「2-0(9-0, 9-2)」という容赦ない人(笑)もいたのだが、スコアまで書いたらMikeのプライドもあるだろうし、僕は敢えてそれをしなかった。

ところが。後日結果シートを参照してみると、「2-1」に書き換えられている…Mike、この野郎。あれはもう勝負が決まった後のただの練習ゲームだっただろ。僕にはそのエキストラゲームに応じる義務はなかった訳だし、どこの世界に勝負が決まってからの練習をスコアにカウントする競技があるの。彼も相当負けず嫌いというかプライドが高いのだろう。そういう奴だって分かってたら3セット目も本気で容赦なく打ちのめしたっつーの。

折角の僕のちょっとした配慮が踏みにじられたような気がして何だか残念。全くアメリカ人と来たら(一般化しちゃダメだけど)。ビジネスにも通ずるところがあるはずなので、今後の教訓として生かさねば。ま、いいや。勝ちは勝ちだから。大会本部に言えば2-0に戻るはずだけど、面倒だし、オフィシャルには2-1ということにしてあげますよ(これも日本人の弱いところかな?)。

(後日談)
と思ったのだが、やはりルールはルールだし、納得がいかないので(はい、僕も負けず嫌いです)、Mikeに渋谷のクラブの話を交えつつ、直接メールを送ってみる。すると彼からすぐに返事が返って来て「君の言う通り。2-1というスコアは間違ってる。多分主催者の僕の友人が僕のプライドを気遣ってそうしたんだろう。でも楽しかったからまた一緒にスカッシュをしよう。都合の良い時間を教えてくれ」とのこと。わだかまりは完全に溶けました。やっぱり不明確な点はうじうじ悩むよりクリアにすべき。Mikeは第一印象通りのナイスガイでした。

Friday, February 25, 2005

Indoor Soccer Tournament 

Fedeが参加を呼びかけていたインドアサッカー大会が開幕した。Tuckから30分程南にあるインドア施設で行われる7 on 7のリーグ戦である。Tuckからは2チームが参加。試合開始の夜10時前に到着すると、我らがTuck Aが試合をしている。後半も残り数分でなぜか2対2の接戦。何やってんだと思ってるうちに、決定機を何度か逃し、結局2対4で負けてしまった。このメンバーで負けるというのは想像がつかない。相手が強かったのか、うちの調子が悪かったのか(後で理由が前者であることが判明)。Steveが左足をひどく捻挫して唸っていたので、怪我だけは気をつけなければ。

時間が詰まっているらしく、練習もそこそこにTuck Bの試合が始まった。相手は青いユニフォームを着た地元のチームということ以外何も分からない。でも見るからに動きが速い。結果から申し上げると、何と2対8の完敗。完膚なきまでにやられました。四方に壁があり、その壁を使ってもいいルールになっているので、とにかく試合が止まる時間がほとんどない。25分ハーフの50分というのも永遠のように長く感じる。リザーブも少なかったので、ほんとに酸欠で倒れるかと思った。

一番盛り上がったのは残り2分、1対8からあげた2点目。高校時代にサッカー部で帝京高校と「対戦」したことがあるというToshi(今日も孤軍奮闘の働き)からの見事なスルーパスが僕が走りこんだディフェンスの裏にピタリと通り、前を向いた状態でトラップも成功。もうワンタッチ右に開いて左隅にシュート、と思いきや、そこまで来るかというところにGKが飛び込んできて跳ね返される。しかし後ろに詰めていたDanaが無人のゴールに流し込み、歓喜の2点目。「歴史的なComebackだ」「20秒で1点ずつ入れれば追いつけるぜ」とみんな大喜び。

今年は僕たちが2年生となり、Tuck Bは半分顔ぶれが変わる訳だが、負けても楽しく、笑いが絶えない文化は変わっていない。1年生のGK、Mattがどうやらムードメーカーになりそうだ。「やっぱディフェンスが甘いな。一人しか残ってないから、おーい戻って来―い、とか言ってる頃にはボールはもう俺の股の下を通ってる」とか「あいつら試合と関係ない話ばっかりしてきやがったな。どの株買えばいいですかとか。ちくしょー、Capital Marketsだったら絶対負けないぜ」等としゃべり倒して爆笑を誘ってくれる。

帰り際、フォワードで点を取りまくっていた相手選手に「君、何歳?」と聞くと"Twenty"との答え…そりゃ速いし疲れ知らずな訳だよ。ハーフタイムにMattから出された「奴を止めろ」という指示に「どうやって?」と答えていたShawnは正しい。全部で10チームが参加しているようだが、歯が立つわけがないTuck Aと、そのTuck Aを破ったどこぞの地元チーム、そして今日の相手。実はお笑いチームが結構いて勝てるんじゃないかと思っていた僕が甘かった。前途多難。1勝したら大騒ぎ間違いなし。

Wednesday, February 23, 2005

Horiemon Part 2 

ポイズンピル発動と来ました。

話を整理すると、

・フジテレビ(のみ)を引受け先とした新株発行権
・市場価格よりも約12%割安で発行(あれ、今見たら株価すごい下がってる)
・ライブドアのTOBが明るみに出た「後」に予約権を発行

ポイズンピルに関しては一般的に以下のような問題が指摘されている。

・主要目的ルールに違反(会社の支配権を持つことを主要目的として新株を発行することは認められないという判例あり)
・株主平等原則に抵触
・財産権の侵害

金融出身のK氏によると、主要目的とは「表面上の目的ではなく、実質的な目的で判断される」ということだが、ニッポン放送が何を言ったところで今回の目的が「買収阻止」なのは誰の目にも明らか。「臨海副都心スタジオ・プロジェクトへの投資資金」という子供の嘘みたいな言い訳が通るようなら判例も完全に形骸化する。

僕はホリエモンのファンでもなければ、彼のやり方が正しいとも思わないが、そもそも一連のコメントを見るに、ニッポン放送、フジテレビ経営陣の対応がいかにもまずい。個人的には既存株主の権利を完全に無視した単なる自己保身と映る。ホリエモンが絡んで退陣に追い込まれたどこぞの金満野球チームのオーナーとイメージが重なるのは気のせいだろうか(今回は映像を見ていないので人柄は分かりかねる)。

「普通は株主が変わっても企業価値が変わらないが今回は違う。グループにとどまれば価値を維持向上できる」というニッポン放送社長のコメントも全く根拠に乏しい。

「市場価格が下がってもTOBに応じれば5,950円で売却できるから既存株主にも不利益にならない」という副社長の見解も「なんだ???」という感じである。

大企業の経営者たるもの、もう少しまともな対応ができないのだろうか。いずれにしても日本の取締役会の仕組みを考えれば、本件は取締役会ではなく、株主総会に諮るのが筋だろう。証券マンのY氏をして「日本資本市場史に残る面白いイベント」と言わしめるこの騒動。果たしてどうなるのか。近々日本のビジネススクールでケースになること間違いなし。


Sunday, February 20, 2005

Party Weekend 

木曜日はCemの30歳の誕生会"The Big 3-0 Bash"、金曜日はKim邸でのパーティ、土曜日は先日大雪で中止になったRebeccahのローラースケート・パーティ"Roller Skatin’ Baby!"とJuanの誕生会。今週末は完全に酒浸りです。

木曜日。Cemと奥様のTamは本当にナイスカップルで、よく食事にも招待してもらっているのだが、彼の人望もあって、当日は総勢約50名が詰め掛けた。最初の頃は9時半開始と言われると当然9時半に行くようにしていたのだが、ホスト以外誰もいないという状況が続いたので(Tuckiesは本当に時間にルーズ)、徐々に到着時間を遅らせるようにしている。今回は45分くらい遅れて行ったのだが(遅すぎたかなと思いつつ)、それでもまだ人が少なかったのにびっくり。10時半を過ぎた辺りから漸く混み合ってくる。

まずはごく最近仲良くなったMatthewと話し込む。彼は本当にナイスガイで、僕が彼の名前を知る前から、廊下などで"Hey, Rio"とよく声をかけてくれていた。「今の誰だ?」という状況が暫く続いたのだが、それも失礼なので名前を調べて僕からも声をかけるようになった。ゆっくり話してみると、熱狂的な欧州サッカーファン(アメリカ人には珍しい)であることや、Tuckでの経験に対する考え方など、共通点が多かった。またTuckには廊下ですれ違っても無視して行ってしまうような人が実は結構いて、その度に憂鬱になるという話をすると、同じアメリカ人でもそういうことがよくあるということを聞いて何だか少しほっとする。MBA、就職活動という厳しいプレッシャーの日々、またHanoverという極度の田舎に適応できないアメリカ人が意外に多いと言う。

Carolyn, Adamとは「春にはいい加減Outward Boundの同窓会をやろう」ということで一致。Outward Boundはもう遥か昔のことのように思える。Carolynは一見ぶっきらぼうで近寄り難い雰囲気なのだが、話をするといつも僕のことを気にかけてくれる優しいお姉さんである。お互いの近況や授業の話、今後のキャリアなど、久しぶりにゆっくり話ができた。Jerryからは彼がChristianと一緒に始めた不動産ビジネスについて教えてもらう。この二人は今後最も成功するTuck05になるんじゃないかとRishが前に話していたのを思い出した。いつかBusiness Weekの表紙を飾ってほしい。

最近子供が生まれたばかりのPrasad(娘の名前がRiyaで何となく僕の名前に似ているので親近感がある)はすっかり親ばかになっていて、春学期は週休五日で毎日子供の世話をするらしい。最後はいつものラテンガイズ(Fede, Pechos, Gui)とワイワイ騒いで気がつくとみんな既に帰った後。「うちに泊まっていけ」と盛んに勧めるCemに御礼を言いつつ家路につく。


金曜日。KimとはTLFプロジェクトで一緒だったのだが、それ以来あまり話す機会がなかったので、パーティの招待メールをもらってからとても楽しみにしていた。が、あろうことかちょっとうたた寝のつもりが爆睡してしまい、目が覚めたら夜中の11時。ガーン。8時半からということだったのでさすがに今から行ってもダメだよなーと一旦諦めたのだが「いや待てよ。まだやってる可能性あるな」と思い、ダメもとで出かけてみる。

到着したのは11時半近く。車を止めるスペースがないほどまだ人が残っている。どこに止めようか右往左往していると、同じようにスペースを探している車が数台。おいおい、君らも今来たのかよ。家に入ろうとすると入り口付近で立ち往生している車が一台。どうやらBrunoと奥さんが帰るところなのだが、前の車が邪魔でスタックしている様子。「あの青のAcuraが誰の車か探して来てくれないかな?」というので、「OK、ちょっと待ってて」と小走りで玄関へ向かう。今日はまた冷え込みが厳しい。

玄関に足を踏み入れると、立錐の余地もなく、すごい熱気である。みんないい感じでお酒が入って盛り上がっている。シャンパンを持参して行ったのだが、早速入り口付近でYevgenyと「お、悪いな、俺のために」「いやお前にじゃねーよ」というお約束の冗談を交わした後、Kimに招待の御礼を言って、早速Acuraの持ち主探しを始める。あまりに人が多いのでかなり手間取ったのだが、結局Kanishkaの車と判明。Brunoも無事に出られたようでほっと一安心。Teddyと椅子に座ってじっくり話し込む。

暫くするとEthanと奥様のJacki(実はサッカー友達)が椅子を持参してジョイン。Ethanは春休みのAsian Tripに参加して東京にも行く予定なので、いろいろ教えてあげようとしたのだが、どうやら中国の方に興味があるらしい…まいいか。Jackiは本当にできた奥様でいつも頭が下がる。その後はIsaiと長い立ち話。IsaiとはJerry家でのパーティで初めてゆっくり話したのだが、何だか波長が合う。こういう新しい発見があるのがパーティの良いところ。あと学校ではほとんど会わないのに、なぜかパーティに行くと必ず会う奴というのがいて、「またお前か」みたいな挨拶も結構居心地が良かったりする。

Kim, Isaiとソファに座り込んで話をしていると、Teddyから「Rio、もうホスト以外俺たちしか残ってないぞ」と指摘され、「あれ、ほんとだ」と帰り支度を始める。二日連続で最後まで居座ってしまった。ちなみにKimはRebeccah, Nikki, Nimaと女の子4名で住んでいる。どこぞの男4名の家と比べて格段に手入れが行き届いている。当たり前か。


土曜日。Alexの友人で、日本に1年ほど住んでいたNoelがカナダからやって来るということで、Y氏、M氏と僕に声がかかり、5人でKotoに日本料理もどきを食べに行く(意外に旨い)。Noelはかなり陽気な性格、日本人も毒舌三人衆が集まったので、下らない話も含めてかなり盛り上がる。Noelは秋頃に東京に来るということなので再会を楽しみにしたい。明日8時間かけてトロントに帰るとのこと。

その後、ローラースケート・パーティに車を飛ばして参加。ところが5人が到着した頃には人もまばら、しかもただローラースケートを滑るだけでかなり寂れた雰囲気が漂っている。とりあえず2、3周したところで、「なんだこれ、異常につまらない」ということに気づき、早々に退散。そもそも幹事のRebeccahが既にいない。Kanishkaによると「音楽とか雰囲気に失望してうなだれながら帰って行った」とのこと。おいおい、そりゃないだろー。幹事なのに。リサーチ甘すぎ。いやー、つまらなすぎてほんとびっくりした。Noelに"This party sucks"と言うと、「全く同感。辞書でSuckって言葉を調べたら多分このパーティのことが出てくるだろう」と高笑いしていた。

その後、僕はJuanの誕生会へ。またKanishkaと会う。"You are everywhere, Rio" "No, you are"とお互いやや呆れ顔。確かに毎日会っている気がする…三日連続、しかも今日はいろいろ梯子しているので、いい加減途中で電池が切れてきた。若干無念に思いつつも、午前1時前には失礼する。しかし思ったよりも人数が少なく、しかもラテン系ばかりだったような気がする。他にもイベントがあったので分散してしまったのだろう。以上でパーティ・ウィークの報告を終わります。

Saturday, February 19, 2005

TOB 

Corporate Valuationの授業でTOB(株式公開買付)やHostile Takeover(敵対的買収)を取り扱ったのと前後して、日本からホリエモンが大暴れしているニュースが飛び込んできて、日本人学生の間でもかなり話題になっている。

・個別取引で大量に株式を取得
・大量保有開示義務に従って所有額を開示
・株式公開買付を発表、敵対的買収へ

という流れは米国流資本主義社会においては珍しいことではないが、日本ではそれこそ黒船来襲に近い騒ぎになったことは想像に難くない。数日間の混乱を経て、日本ではまるで政財界トップのコンセンサスがとれたかのように、一斉に批判的な報道が始まっている。しかしそのコメントにあまり説得力がない。「これまで営々と築き上げてきたものを一晩で譲り渡す訳にはいかない」「金があれば何でもできるというのか」「メディアを外資に売り渡すことになってもいいのか」と言った感情論が先行している。

これは高度経済成長を経験した僕の両親世代(60歳前後)にとってはごく自然な反応であると思う(注:父から苦情が来たので、あくまでも一般論ということを強調しておきます(笑))。一方、30代前後~40歳にかけての世代はある意味ニュートラルである。Tuckの日本人学生と話していても、ホリエモンの手法について「やり方が拙いから成功はしない」「本物のバカなのか、本物の切れ者なのか判断できない」という説が主流だが、彼が提起した構造的問題については一様に意義があると思っている。株式を上場している以上、こういうことが起りえるということを強烈に印象づけたという意味で。

特にマスメディアという産業がこれまで競争にさらされて来なかったこと、その結果、資金を効率的な方法で株主に還元して来なかったこと(社員の給与水準が法外に高いなど)は客観的情報から判断してもある程度事実である。また放送内容についても、国内資本だったからこそバイアスのない、公正な内容であったかというと大いに疑問を感じざるを得ない。つまり理解しなければいけないのは、外資万能ということではないにせよ、上場企業である以上、常に株主価値を最大化するような経営努力を続けていかなければ、このような事態は容易に起りえるという世界の潮流である。

このような敵対的買収への主な対抗策としては、

・ポイズンピル(通常10~15%株式を取得された時点で発動する既存株主への割安新株発行権)
・定款変更:絶対多数条項(Super-Majority Vote)、取締役期差選任条項など
・ホワイトナイト(第三者との友好的なM &A)

などがあげられるが、どれも根本的な解決策とはなり得ない。(米国では取締役会の同意を得ずに一定割合の株式を取得した場合、買収を禁止する州法も存在する。例えばデラウェア州は15%を基準にして三年間は買収を禁じている)

授業では1997年に起ったヒルトンによるITTグループ(シェラトン)に対する敵対的買収のケースを扱った。独立を強く望むITTの経営陣はこれに強く抵抗、様々な遅延戦術、ヒルトンが主張したリストラ策を自ら推進する一方、激しい応札競争の末、最終的に次善策であるホワイトナイト(Starwoodウェスティンとの友好的合併)を選択する。

純粋にValueという観点から見ると、シナジーを追求した企業買収の多くが結局期待した成果を生んでいない一方で、経営戦略の不備をついた企業再生型買収はそれなりのリターンを実現しているという歴史的事実がある。なぜシナジー追求型買収が成功しないのか?なぜ企業再生型買収が敬遠されるのか?株主価値の最大化の対極にある概念は恐らく経営陣の保身である。自ら生涯をかけて築き上げてきたキャリア、価値観、社会的影響力を失いたくないという保身。必ずしも投資家へのリターンとして還元されない無駄な投資が許される風土。結局行きつく先は、

・企業は誰のために存在するのか

という根本的な質問に戻ってくる。それは株主なのか、経営陣なのか、社員なのか、顧客なのか。今、日本で起きていることは、決してホリエモン個人の資質によるものではなく、日本が米国型資本主義に追随してきたことによって必然的に起った構造的問題であるという意味で意義がある。「損をしたけれど良い経験になった」というような呑気な姿勢で投資の意思決定を行うことは最早難しいということである。

企業や社員の倫理については米国でもいろいろと議論があるのだが、それについてはまた後日。

Wednesday, February 16, 2005

Game Theory 

後半のミニコースであるゲームセオリーが始まった。読み物がとても難解なのだが、これが結構面白い。ゲームセオリーと言うと、「自分がこう出ると向こうが想定していた場合こう出てくるから、そう仮定するとこっちは…」という程度の理解しかなかったのだが経済学として高度に理論化されている。

まずは支配戦略(Dominant Strategy)、ナッシュ均衡、クールノー数量競争(Cournot quantity competition)、ベルトラン価格競争(Bertrand price competition)、反応関数(Reaction Function)、同時行動ゲーム(Simultaneous move game)、順次行動ゲーム(Sequential move game)といった基本を学び、3回目の今日はTuckの卒業生であるゲストスピーカー(Scott)がやって来た。

テーマは「電力自由化に伴う新規参入」である。つまり自分が新規参入事業者の立場に立って「参入すべきか、するならばどれだけ投資すべきか」という意思決定を、ゲームセオリーを用いて行うのである。Scottが自分で書いたというケースを題材にディスカッションが始まる。このケースの目的は主に以下の二つ。

・ゲームセオリーが実際のビジネスに応用できることを理解する
・金融モデルにゲームセオリーを統合する

電力は複数事業者が設備を持つことに経済合理性がない自然独占産業の典型例である。米国では1978年に自家発電の余剰分を販売できるように規制緩和(電力会社より安く提供できる場合は電力会社に購入義務)が行われ、1992年には送電設備が開放された(物理的に離れた顧客に販売することが可能に)。その後、電力取引市場が誕生、I-Bankも参入し、現在では先物も含めて株式市場のように機能している。

既存事業者による最大供給量とピークアワー需要量のギャップを埋めるために、どれだけのキャパシティを建設すべきか。事業者が一つだけの場合(独占)、十分に多い場合(完全競争)、その中間といった順番で段々話が複雑化してくる。例えば独占状態にある事業者には当然自らのNPVを最大化するだけのキャパシティを建設しようというインセンティブが働く。ここに参入しようとする場合、

・Supplier2はSupplier1がNPVを最大化すると仮定
・Supplier2は自らのNPVを最大化するキャパシティを選択
・Supplier1はSupplier2が「Supplier1がNPVを最大化すると仮定する」と仮定
・Supplier1は自らのNPVを最大化するキャパシティを選択

ということをひたすら繰り返し(Iterate)、ナッシュ均衡にたどり着く。

このモデルは各プレイヤーが合理的に行動ことを前提にしており、合理的に行動するかどうかの程度はプレイヤーが保有する情報に依存するのだが、電力取引市場は高度に情報化されているので、こうしたゲームセオリーを基にしたモデルが実際に使われていると言う。ただ実際のアプローチは、競争の条件がSimultaneousかSequentialかで変わってくる。Scottは実際にジョージア州に参入した際のエピソードを引き合いに出し、「ライセンスを取得してすぐにこれだけの投資をするというプレスリリースを打った。これはSequential Gameなので他社の意思決定に影響を与えることが可能だからだ。つまり我々は先制攻撃(Preempt)を仕掛けたことになる」

ふと数年前に起ったカリフォルニアの電力危機を思い出した。公共性の高い事業がドラスティックな競争システムに移行する場合、事業者がそれぞれNPVを最大化するように動くのはむしろ自然なことである。ただ取引市場の存在が極端な価格変動をもたらし、メガワット(1時間)当り通常50ドル以下で取り引きされている電力が突然1,000ドル以上に跳ね上がったりするのは尋常ではない。またピークアワーにミッションクリティカルな電力を供給できないという事態はそのシステム自体に欠陥があると言わざるを得ない。

授業が終わった後にScottの補佐役で来ていたEvanにいろいろと質問してみる。Evanによると、カリフォルニアの件で供給を上回った需要量はごく僅かなものだったが、それでも電力が供給されないという事態は膨大な経済損失を生むため大問題に発展してしまったと言う。「その後、カリフォルニアでは事業者(Buyer)が一社のみとなり、政府が介入してプライスキャップを設けるなどの規制を強化しているが、どれも効果的に機能しているとは言えない。カリフォルニア以外の州では未だに取引市場による自由競争が行われている」とのこと。それにしてもトレーダーという人種は恐ろしい。

Saturday, February 12, 2005

Managerial Decision Making 

Prof. Womackによるミニコース"Managerial Decision Making (MDM)"が終了した。これは授業選択の際に、シラバスを見ても唯一内容がイメージできなかったのだが、過去の学生の評価の高さ、WomackCapital Marketsの授業(コア)の質の高さを考えて選択した。シラバスの内容を要約すると、

The goal of this course is to encourage us to think critically about how we make decisions and then to learn how to avoid common decision errors that occur because of faulty, ingrained mental models. This course could also be named "The Psychology of Judgment and Decision Making." It is a "big picture" course that is cross-functional in both its theoretical ideas and its applications.

ということになる。恐らく
Tuckの学生の多くも授業の内容を具体的にイメージできていなかっただろう。授業を終えた今、僕は漸くこの意味が分かる。そして非常に有益だったと感じている。

この授業では通常のリーディングが少ない代わりにInfluence, Moneyball, Into Thin Airという三つの副読本がアサインされた。「それぞれ興味深く、読みやすい本なので、5時間もあれば読破できる」という話だったのだが、当然というか僕にはその倍以上の時間を要した(Moneyballは日本語で読んでいたのでスキップした)。

この授業の主なTakeawayとしては、

Rationale(合理性)の定義は困難である。人間はそれぞれ異なったExpected Utility(期待効用)を持っていて、リスクを好む人もいればそうでない人もいる。つまり完全な合理性を前提に意思決定を行うことには危険を伴う

迷ったらBase Rateを使え。迷わなくてもとにかくBase Rateを使え(Base Rateとは直感やバイアスのかかった見方に頼るのではなく、Historical Dataを最大限に活用するという意味である)

・Bayesian Updateを常に考えろ(Bayesian Updateとは現在の客観的な状況分析(Prior)に新たな情報が飛び込んで場合、その情報が加わったことによる状況分析(Posterior)がどの程度影響されるべきかという考え方である。つまり情報に踊らされずにその真価を問えということ)

・Heuristics(経験則)には常にバイアスがかかっていることを肝に銘じろ(例えばAvailability Biasのように、自分がその情報に接する機会が多かったが故に統計とは乖離した意思決定を行ってしまう等)

統計分析や学術研究の結果をベースに、いかにもWomackらしくダイナミックに授業が展開していく。彼の持論は非常にDeterministic(決定論的)であるが故に、多くの学生は時に混乱し、立て続けに質問をしながら教授の真意を正したりしていた。授業の後半で僕は唯一ひっかかっていた疑問をぶつけてみた。「この授業の概念はとにかくUse Base Rate. Overuse Base Rate. ということだと思うが一つ根本的な疑問がある。人間や組織のBase Rateを変えることは可能だと思うか?」

この質問はタイミングも良かったらしく、Womackがやや興奮気味に、「今の質問は素晴らしいと思わないか?」と言った後、彼の持論を語り出した。「多分これを言うと君たちの多くは憂鬱な気分になって帰っていくことになるかもしれないが(笑)、基本的にある程度成熟した大人のBase Rateを変えることは極めて難しいと考えている。特にPersonalityに関わる部分は難しい。ある人間がそれまでどれほど勤勉であったか、手抜きをする人であったか、そういった要素は過去の行動からかなりの確率で将来の行動、成功を予見できる。実は僕はTuckのアドミッションのアドバイザーでもあるのだが、アドミッションでもこうしたBase Rateの考え方を取り入れ始めている」

ここでまたクラスがやや紛糾。やはりみんな自分たちの可能性、成長性について希望を持ちたいのである。人間誰しもそうだろう。僕も基本的にそうした希望を捨てていないので、腑に落ちない部分もあった。ただ僕はWomackの考え方は嫌いではない。

中学生の時の国語の作文で「宇宙空間の全ての出来事は全て一定の法則に基づいて動いており、人間の出会いや成功、失敗、生死さえ、その法則に基づいて物質が衝突して起っているにすぎないのではないか。僕がユニークだと思っている自分の思考回路も、アンコントローラブルな遺伝子と生育環境、周囲の人間関係に影響を受けている。その絶対的な存在をある人は神と呼び、ある人は科学と呼ぶ。それだけの違いではないか。そう考えると人生は少し虚しい」というような厭世的な内容を書いて、先生を辟易させた覚えがある。

Womackはさすがにそこまで踏み込んではいないが、基本的に人間の可能性を否定している。Base Rateは人間それぞれ違う。例えばバスケットで言えば、シュートをどれだけ成功させられるかという能力は人によって違う。ただ一度そのBase Rateが確立されれてしまえば、現れる結果は基本的にランダムであり、"Hot Hand"(バスケットの選手が一度決め出すと、立て続けにゴールを決めるという神がかり的な現象)も純粋に統計分析を行えば、ランダムな結果の一部に過ぎないと言う。コインをランダムに投げ続けると、裏表が交互に出続ける確率は極めて低く、むしろ5回、6回と同じ面が連続して出る可能性が高いと言う。一方長期的に見れば結果は確率(コインの場合は1/2)に戻っていく。これはRegression to Mean(平均への回帰)という言葉で説明される。

前にも書いたが、Moneyballはプロ野球(MLB)のチーム運営に高度な統計手法を導入して、貧困球団アスレチックスがいかにして常勝球団を作り上げたかというストーリーであり、このクラスの文脈と合致している。「お金をかけずに勝つ」という目標のために、勝利と相関の高いデータを抽出、その目標に貢献し得るUndervaluedされた選手を過去のデータから発掘してくる。またInto Thin Airは、多くの犠牲者(日本人女性一名を含む)を出した商業ヒマラヤ登山において、Base Rateの軽視、情報のバイアスや、チームスピリットの欠如、リーダーの不在がいかにして悲劇につながったかという物語である。どちらもノンフィクションという枠を超えて、Business Contextで適用されうるという意味で興味深い。

個人的にはInfluenceから最も大きな洞察を得た。これはまさしく人間関係におけるPsychologyであり、人間の認知に影響を与える要因が、(1) Reciprocation, (2) Commitment, (3) Social Proof, (4) Liking, (5) Authority, (6) Scarcityの六つに分類されている。過去の経験に照らしても、「あるある、そういうこと」と頷いてしまうような興味深い事例がふんだんに盛り込まれており、公私を問わず、人としての在り方、人間関係の構築、交渉事において重要な示唆を与えてくれた。

クラスのレビューとしては非常に長くなってしまったが、備忘録もかねて残しておきたい。


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